NHK今日の健康 | 発達障害「ADHDとは?」2018年11月放送
NHKきょうの健康、2018年11月第3週は
全力サポート!子どもの発達障害の特集です。
11月19日(再放送は11月26日)は
「注意欠如・他動症(ADHD)」について
特徴、診断、治療、薬など
昭和大学教授の岩波先生からお話がありました。
(11月16日の「先どり」でも放送されましたね)
ADHDの特徴とは?
発達障害でいちばん多いといわれるADHD。
ADHDは、行動をコントロールすることが苦手だといわれます。
そのため
- 注意力を継続できない
- 忘れ物が多い
- 物をよくなくす
- 落ち着きがない
- 一方的にしゃべりすぎる
- 後先を考えずに行動する
といった
- 注意の欠如
- 多動性・衝動性
が特徴としてあげられます。
けれども、そのいっぽう、
- 好奇心が旺盛
- 頭の回転が速い
- 好きなことには異常なほど集中する
といった特性から成功する人も多いのがADHDです。
また、睡眠障害も起きやすく
- 寝つきが悪い
- 熟睡できない
- 朝なかなか起きられない
といった症状もみられます。
ADHDはどうやって診断される?
ADHDなどの発達障害は、病気というより、個性や特性に近いものと考えられています。
そのため、診断は、問診が中心で、時間をかけて行われます。
ADHDには診断基準があって、チェックリストをもとに判定されます。
チェックリストは
- 注意の欠如について9項目、
- 多動性・衝動性について9項目あり
それぞれ、そのうち
- 6項目以上に該当していて、それが
- 6か月以上続いていることと、
- 学校生活などに影響が出ていることで、
ADHDと診断されます。
問診では、ASD(自閉スペクトラム症)と区別するために
- 言葉の遅れ
- 育てにくさ
- 迷子になりやすい
といったことがなかったかということがきかれます。
保育園や幼稚園の連絡ノートの通信欄のコメントも参考になります。
また、家族にADHDの人がいるかどうかも確認されます。
ADHDチェックリスト
注意欠如の症状
- 勉強中に不注意な間違いをする
- 活動中に注意を持続することが困難
- 話を聞いていないように見える
- 指示に従えず、課題をやり遂げられない
- 課題を順序立てて行うことが困難
- 精神的な努力が必要な課題を嫌う
- 必要な物をよくなくす
- 外的な刺激によってすぐ気が散る
- 日々の活動で忘れっぽい
多動性・衝動性の症状
- 手足をそわそわ動かす
- 席に着いていられない
- 不適切な状況で走り回る
- 静かに遊べない
- じっとしていない
- 一方的にしゃべりすぎる
- 質問が終わる前に答え始める
- 順番を待つことが困難
- 他人を妨害し、邪魔をする
ADHDは病院の何科を受診するのがいい?
病院では、小児科・児童精神科・精神科などを受診するのがよいでしょう。
ほかに、保健センター(保健所)、子育て支援センター、児童相談センター(児童相談所)、児童発達支援センターなどの都道府県・市町村の専門機関にも相談するとよいでしょう。
ADHDの子供は、集団生活のルールになじめず、友達とトラブルになりがち。
そのため、学校や家庭で注意され続けて自信も失いがちです。
失敗の積み重ねや自尊心の低下は、うつや不安障害(不安症)といった二次障害をひきおこすもとになります。
うつになると、イライラや気分の不安定さが強くなります。
不安障害になると一人で過ごすのを怖がったり、人からどう見られているかに強い不安を感じたりします。
二次障害が重くなると、不登校や引きこもりにもつながります。
ADHDの子供のサポートは親だけでは困難です。
学校、医療機関、専門機関などにサポートを受けましょう。
ADHDの治療はどうする?
ADHDの治療には、行動療法と薬物療法があります。
また、それ以前に環境改善も大切です。
ADHDに適した環境とは?
ADHDの子供は、注意力が散漫になりがちです。
そのため、気が散りにくい環境を整えることが大切です。
ADHDの子供は、整理整頓が苦手なことが多いため、なるべく物を増やさず、物を置く場所を決めて、使ったらすぐ元に戻す習慣を身に着けさせましょう。
机には勉強に関係ないものは置かないようにしましょう。
学校では、窓側の席は気が散りやすいため、先生の話に集中しやすい最前列の席がよいそうです。
ADHDの行動療法とは?
ADHDの行動療法は、褒めることによって、好ましい行動を増やしていく方法です。
ADHDの子供に対しては、叱ることが多くなりがちですが、子供本人は、意識して悪いことをしているわけではありません。
そのため、好ましい行動は褒め、好ましくない行動は注意することで、好ましい行動を理解させることが必要です。
注意するときは淡々と、決して感情的にならないようにしましょう。
また、褒めることと注意することは明確にして、大人の気分によって対応が変わることがないようにしましょう。
ADHDの薬物療法とは?
環境改善や行動療法だけでは改善が困難な場合に、保護者の希望を聞いたうえで、薬を処方されることもあるそうです。
現在は、3種類の治療薬があります。
いずれも脳内の神経伝達物質の働きを調整する薬ですが、作用の仕方がちがいます。
薬の内容については、番組での情報以外に調べたことを付け加えています。
ADHDの薬
メチルフェニデート徐放錠(商品名コンサータ)
ADHDの治療薬として、世界でもっとも一般的に認められている薬です。
ADHDは、脳内のドーパミンのバランスがよくないのが原因と考えられています。
メチルフェニデートは、ドーパミン濃度を高めることで、ドーパミン神経を刺激していると考えられています。
ADHDの子供には鎮静効果があり、衝動的な行動を抑え、集中力を高めてくれるそうです。
特殊加工のカプセルで、飲んだらすぐに表面の薬物が溶け出すとともに、内側の薬物が徐々に溶けていくため、速効性があり、最大12時間効果が続きます。
アトモキセチン(商品名ストラテラ)
選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤の一種。
飲み始めて2週間くらいから徐々に効き始め、2か月くらいで効果が安定してきます。
即効性はありませんが、効果は1日をとおして途切れることがありません。
グアンファシン徐放錠(商品名インチュニブ)
ノルアドレナリンの神経受容体であるα2A受容体を選択的に刺激する薬。
効果が出はじめるのは、飲み始めて1~2週間後といわれています。
島根県立大学のADHD行動療法
番組ではケーススタディとして、島根県立大学の事例が紹介されました。
島根県立大学の出雲キャンパスでは、夏休みにADHDの子供を対象とした「いずもサマースクール」を毎年開催しています。
このスクールの特徴はポイントシステム。
ゲームをしながら、好ましい行動をしたら、みんなで拍手し、ポイント加算。
好ましくない行動をしたら、理由がわかるように話し、淡々と減点。
この結果、参加0したADHDの子供全員に好ましい行動が増えたそうですよ。
まとめ
ほめるときには笑顔。
注意するときには淡々と。
ADHDの子供だけでなく、すべての子供に、いや大人にも大切なことですね。